3月23日よりGallery Seekにて個展を開催する高津ゆい先生にお話しを伺いました!
■制作コンセプト
自然物を主なモチーフとして、彼らの潜在的な魅力(色形の美しさ、生命力のパワフルさ等)が伝わるように制作しています。また私は、彼らには自分たち人が簡単には読み取れない独自の奥深い世界があると考えております。そういった世界を想像し浸りながら、画面に表現し続けています。
■今回の個展テーマ
以前から装飾的な作品を制作してみたいという思いがあり、去年の夏ごろから少しずつ構想を練っていました。今回は個展テーマの「住人」の物語を強く伝えられる画面にするため、尚且つ動物の描写具合の研究も兼ね、装飾と動物の描写の比重を調整してみました。
私は以前から、どの野生動物にも個性があり、彼らはものを考え感じながら生き、はっきりとしたキャラクター性も持っていて、そこに物語も付随していると考えておりました。
今回はその内容に加えて装飾品を身につけさせることにより、強い擬人化によって物語性を強調した形となりました。
「大地主」 B3
■装飾に込めるストーリー性
私は古代文明や古い歴史・寓話が詳しくはありませんがとても好きで、その中で登場する様々な信仰や願いが込められた装飾品などのストーリーに昔から惹かれていました。
それらになぞらえて自分でもストーリーを新しく作り、ほとんどの作品で活かしています。
特にエジプト美術が好きで色彩や形どりを参考にすることが多いです。今回はエジプト美術の比率の決まった人体の表現方法や装飾表現と、有名なタペストリー「貴婦人と一角獣」やアルフォンス・ミュシャ作の品などを参考に構図を考えた作品がいくつかあります。装飾に関しては、画面内の生き物達と作品を見る人とをよりわかりやすく繋ぐ要素だと思い、親しみやすい表現にしようと考えました。
「雑貨屋の主人」 F8
■「雑貨屋の主人」
初めに、登場する動物のキャラクターを伝えるためにどのような装飾品が相応しいか考えます。例えば、「雑貨屋の主人」は特にそれが強く、装飾品の一つ一つがオオツノヒツジに与えられたストーリーまで考えました。
『ツノの一番先についている切先のカバーの様なフサの付いたアクセサリーは彼が生まれた時に彼の両親から贈られたもので、「そのツノが幼い彼自身や、成長する中で他の生き物達を傷つけることのない環境で育つことができますように」という風に願掛けとして一生身につけ続ける』『またそのフサの色で願掛けの種類も違う風習がある』などです。
また雑貨屋の理念として「街の人々の人生の始まりから終わりまで関わり続ける」という事を設定し、その象徴として太陽や月、バラの蕾と満開を超えた状態を描きました。
「市場帰り」 F6
「市場帰り」は、寓話の中ではずる賢いキャラクターの代表として扱われがちな狐を、そうではなくちゃんと自分のお金で買い物をして帰路に付いている狐として描写しました。(個の性質)パッと見どこかから咥えてきただけの果物に見えますが、よく見ると左前脚に小さな巾着をくくり付けていて、自分で代金を支払って購入したものである可能性を示唆しています。
■制作過程
【準備段階】
名古屋にある東山動植物園によく通ってスケッチをし、それを見ながら制作することが多いです。自分の記憶やスケッチだけでは動物の正確な描写ができないと感じた時は、スケッチの際に撮り溜めた写真と見比べたり、図鑑や動物解剖学の参考書を良く確認します。また実物を見たことの無いモチーフを描く時は、様々な資料をもとに理想の線描をしていきます。
【制作】
①別紙に大まかに構想を練ったあと、木パネルに張った水彩紙に直接下描きをしていきます。線画は最終的に0.3ミリ・2Hの硬さのシャープペンを使い清書します。
②全体に下地となる色を数色、薄く塗り重ねていき線画がギリギリ見える状態まで色を乗せます。
③バランスを見ながらここのモチーフに固有色やカゲ色を載せていき、必要に応じて途中で背景色を全て塗り切ります。(黒一色など)
④ほぼ完成の段階で、白や金の絵の具を筆に多く含ませ画面の上で弾き飛ばし、光の粒と空気の流れを表現します。
⑤サインを入れ完成です。
【素材について】
アクリル絵の具を使っているのは、今の時点で自分の表現に最も適していると思ったからです。学生時代からいくつか画材を試してきましたが、その中でも水性であること、不透明性、発色の良し悪し、質感などにおいてちょうど良いです。
シャープペン、ボールペンは線画用の画材として使用します。それぞれの画材の中でもやはり手に馴染んだお気に入りのものがあり、今までいろんなものを試した結果、アクリル絵の具と合わせた時に自分の目指す表現に近い線が残せていると思います。
【ポイント】
モチーフの全体像を描く場合は、動物たちの体のしなやかさを利用し緩急のついたポージングを意識することで、力強さを表現します。特に顔まわりの表現では表情を大切にし、まぶたの閉じ具合や上がり具合、また口角や頰など、ポイントの演出に気を配っています。
高津先生、ありがとうございました!
個展は3月23日(水)~3月29日(火)まで開催しております。
3月26日(土)・27日(日) 各日13:00~17:00は高津先生もご来場予定です!
この機会に是非ご高覧くださいませ。
「高津ゆい 個展 -ワイルドランド-」
3月23日(水)~3月29日(火)
会場:Gallery Seek
出品作家: 高津ゆい
作家来場日:3月26日(土)・27日(日) 各日13:00~17:00
動物を主なモチーフとして、色形の美しさ、生命力のパワフルさ等、彼らの潜在的な魅力を伝えようとしている高津ゆい。
彼らには私たちが簡単には読み取れない独自の奥深い世界があると考え、その世界を想像し浸りながら、画面に表現し続けています。
動物たちの緩急のついたポージングを意識することで、体のしなやかさや力強さを表現し、まぶたや口角、頬など、表情の表現を組み合わせることで、それぞれの個性を演出します。
今回の個展では、私たちが行きつくことができない、自然界で育まれた野生の王国「ワイルドランド」の中で生きる住人たちを描き残しました。
大学でデザインを専攻していたこともあり、壁画やライブペイント、イラストレーションなど、絵画制作に留まらず様々な表現手法を試みる高津ゆいの作品世界を是非ご高覧ください。