7月23日より個展を開催する原田武先生にお話しを伺いました!
■日常における再発見をテーマに
いつもモチーフにしているものはそのもの自体が美しいものが多いのですが、今回の個展では元々が美しいとは言えない鴉や蚊取線香、道端に落ちていた汚れた羽根などをモチーフにしています。日常において美しいと感じられるものだけではなく、それ以外のものの方が多数であり、その一つ一つにも目を向けていきたいと思ったからです。美しいとは言えないようなものが別の視点で見ると意外に面白かったりカッコいい一面を見せてくれたりします。そういったものたちが私の作品によって再発見して頂ければと思います。
「狡猾と恍惚」は家の周りによくいるカラスをモチーフにしているのですが、正直いつもうるさく鳴いていて鬱陶しい存在です。しかしながら、観察してよく見ていると何処かカッコ良く凛々しい一面もあるように見えてきます。そういった様々な一面を表現したいと思い制作しました。技法的な部分で硫化カリウムによる硫黄と銅の化学反応で出している黒色をうまく利用することによって、カラスの紫がかった黒色をこだわって制作しました。
また、金槌と鏨を用いて一本一本打って表現している羽毛は毛の流れや触感などが伝わるように工夫しました。
■制作過程
①今回制作で使った銅板場所ごとに 1.0 ㎜~1.2 ㎜の厚みを使い分ける
②銅板をバーナーで焼鈍する。焼鈍すると銅板は手で簡単い曲がるくらい柔らかくなる
③焼鈍すると真っ黒に酸化膜が付くので希硫酸につける
④銅板をハサミで切って当て金、ヤットコなどを使ってパーツを作っていく
※当て金
⑤パーツが出来たら 順番にTIG溶接で溶接をしていく
⑥頭が少し出来たら松ヤニを内側に溶かし入れて細かい形を作っていく
⑦目の縁は銀で作った別パーツを銀鑞付けする
⑧尾羽は別パーツで作っていく
⑨⑤同様に尾羽をつける
⑨全体の形が出来てきたらまた、松ヤニを内側に溶かし入れて細部を少しづつ金槌と鏨を使って作っていく
⑩細かい羽毛も鏨で表現する
⑪火で炙って松ヤニを出す
⑫細部完成
⑬羽と足をつける
⑭硫化カリウムを溶かした液体につけることによって黒く色上げをする
※硫化カリウムを溶かした液体
■ほかの金属作家とは違う原田武の魅力
動物や植物の忠実な再現を目指しているのでは無く、様々な空間の空気感を意識し技術を見せるのでは無く、それぞれがまとっている色々な目に見えない何かを表現したいと思っています。自分が制作するうえで「目に見えない何か」は空気感でありそれは、それを表現する方法の一つは全体のバランスと余白美によって表現できると思っています。
原田先生ありがとうございました!
個展は7月23日(金)~8月1日(日)まで開催しております。
この機会に是非ご高覧くださいませ。
以前のインタビューはこちらから
◇2017年インタビュー
原田武作家インタビュー : Gallery Seek Official Blog (livedoor.jp)
◇2020年インタビュー
原田武インタビュー2020 : Gallery Seek Official Blog (livedoor.jp)
「原田武 金属造形展 -郷愁-」
7月23日(金)~8月1日(日)
会場:Gallery Seek
出品作家:原田武
作家来場日:7月23日(金)・24日(土) 各日13:00~17:00
金属造形作家、原田武。いつもモチーフにしているものは昆虫や植物など、そのもの自体が美しいものが多いのですが、今回の個展では元々が美しいとは言えない鴉や蚊取線香、道端に落ちていた汚れた羽根などをモチーフにしています。一見美しいとは言えないようなものでも、別の視点で見ると意外に面白かったりカッコいい一面を持っている。そんな”再発見”をこの個展を通して感じて頂けますと幸いです。その感覚は、子供の頃、身近な動植物に対して感じた純粋な疑問や好奇心に近しいものがあるのではないでしょうか。大人になるにつれて無意識に失われていた身近への関心が、作品を通して想起されると同時に「郷愁」を感じさせます。モチーフを忠実に再現することに重きを置くよりも、それぞれの周りに纏う、目には見えない空気感を表現することを大切にしている作家だからこそ、心に響く作品に仕上がるのです。 幼少期に感じた記憶を昇華した部分と、金属素材ならではの技術が絶妙に組み込まれた、唯一無二のアンバランスな魅力を放つ作品を是非ご高覧くださいませ。